帰国子女学級 そのⅢ

Posted By taga on 2015年11月3日

あるとき、算数の授業中に一人の子どもが泣き出した。
僕は、その子を部屋に呼んで
「なんで泣くの?分からないからって泣いてたらダメだよ。」
と諭した。そうすると、その子は
「泣いたのは、先生が笑ったから。」
と言った。
胸を刺されたような気がした。
帰国子女は、帰ってきてから嫌な思いをたくさんしている。
友だちに言葉がおかしいと笑われ、
「こんなこともできないのか」
と言われ・・・。
その子の失敗を僕は笑った。

取り返しのつかないことだった。

なのに、
僕は、同じことを繰り返してしまった。
子ども達とやわらかいボールで野球をしていたとき、
ある男の子がバッターボックスに立った。
カタールから帰ってきた子どもは、野球なんてできない。
いろいろともっちゃりとしたことをして、
みんなに文句を言われたり、笑われたりして、泣いてしまった。
「遊んでいる時にいやなことがあっても、泣いたらダメ」
と、僕が言ったとき、彼はこう言った。
「先生が、笑ったから。」

頭をぶん殴られたような気がした。
ほんと、オレは教師に向いていないなあ、
おんなじこと繰り返して子どもを傷つけて、
資格なんてないよなあ・・・
家で落ち込んだ。

そのときのことが頭を離れたことはない。
だから、僕は子どもにかける言葉に気を付けるように努力してきた。
できたと確信したこともないが
いろいろな本を読んで子どもの心を研究して
言葉のかけ方をさぐってきた。
それでも僕は、そのときの自分のしたことを
乗り越えることはできない。
今でも、鮮明にあのときの二人の姿が頭に浮かぶ。

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