春のうれしい便り

Posted By taga on 2019年3月11日

「先生、息子の良い所は何ですか?」
この問いにはっとさせられたことがある。

一年生を担任していた時、
なかなか運筆もままならずに文字を書くのにすら苦労している子どもがいた。
僕も個別に一生懸命指導した。
他の教科においても出遅れていて
追いつきにくい。
個人懇談では
「おうちの方にも、さらにご協力いただかないと。
 このままでは先がしんどくなると説明しよう。」
等と考えて臨んだ。
そうしたら、お父さんがいらっしゃって、
開口一番おっしゃったのが、冒頭の言葉だ。
僕は頭をガツンと殴られたような気がした。
ふだんは懇談では子どもの良いところを語る。
それが僕の教育の中心だったのに、子どもができていないからといって
僕の頭は勉強のことでいっぱいであった。
子どもの記録をとっていたノートを開いて
「いつも、何かおもしろいことを言って、みんなを楽しくさせようとしてくれていますよ。
彼のおかげで、クラスが明るいです。」
と言った。
「それは良かった。
先生、あの子の『春樹』という名前は、
周りを明るくする大きな樹に育ってほしいという願いからつけたんです。」
お父さんは笑顔で帰って行かれた。
僕が大切なことを思い出させていただいた時だった。

この四月から、彼が文科省に入庁する。
きっと教育に明るい灯をともしてくれるだろう、
願いのこもった名前のように。

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Comments

One Response to “春のうれしい便り”

  1. SUNAMI より:

    目頭にじいんとくるエピソードですね。私の息子も全く同じ漢字です。教師の立場も親の立場も、他人事とは思えませんでした。
    私は今月で2度目の育休を終え、いよいよ一年七ヶ月ぶりの仕事復帰です。今まで教員の仕事を、適職でないからと本気でしてきませんでしたが、今回は多少腹をくくりたいと思っています。
    多賀先生のブログや動画、これからも楽しみにしております。