「先生が笑ったから」

Posted By taga on 2013年7月13日

今でも、ときどきこの言葉を思い出す。

33年前に二人の子どもから言われた言葉。

僕は、ほんとに分かっていない教師だった。

帰国子女学級も五人をこえ、

みんなで手打ち野球ができるようになった。

バッターボックスに入った一人の子どもがなかなかボールを打たないから、

みんながいらいらした。

手打ち野球は打たないと始まらないルールだった。

いろいろはやしたてて、

とうとう彼は泣き出した。

僕は、子どもたちが責めたからだと思った。


そうしたら、その子がぽつりと言った。

「泣いたのは、先生が笑ったから。」

帰国子女の何人かは、帰国後、地元の学校に転入する。

子どもによっては、そのまま馴染んでしまうときもある。

でも、公立で馴染めず、不適応を起こした子どもが

附属の門をたたく。

彼は、そのうちの一人。

公立で分かってもらえない思いで苦しんで附属にやってきた。

その彼を、教師がからかって笑った。

今でもそのときの光景が頭に浮かぶ。

僕は、立派な教師でもすごい教師でもない。

謙遜ではなく、それは事実なのだ。

新任の講座で先生たちに言う。

「医者は、一人前になるまでに、何人も患者を殺すと言われます。

教師は、一人前になるまでに、何人もの子どもたちをつぶします。

みなさんが数年で辞めたら、子どもたちをつぶしただけで終わるんです。

何十年とかけて、もっとたくさんの子ども達を育てるのですよ。

だから、数年で辞めては絶対にいけません。」

 

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